― リキュールづくりを通して、地域と関係をつくる ―
私たちは、滋賀県多賀町を拠点に、
地域の農産物や里山の恵みを使ったリキュールづくりをしています。
といっても、
最初から「お酒をつくろう」と決めていたわけではありません。
はじめて多賀の里山に来たとき、
言葉にするのが難しいのですが、
こころが「すん」と静まるような感触がありました。
派手な景色があるわけではありません。
でも、どこか落ち着いて、
長い時間が積み重なってきた場所なんだと、
身体で感じたのを覚えています。
はじめて来たと時の風景
その後、はじめて酒蔵の中に入ったとき、
その大きさに少し圧倒されました。
「こんなに立派な建物が、ここにあるんだ」と。
かつてこの酒蔵が、
地域の経済や暮らしを支えていた場所だったと想像すると、
なんとも言えない、渋くて重たい存在感を感じました。
ここは、
ただの建物ではなく、
地域のシンボルだった場所なんだと思いました。
同時に、
この場所が今のまま使われていないことに、
強い違和感も覚えました。
「このままなのは、もったいないな」
それが、正直な最初の気持ちです。
何かをしなければ、という使命感というより、
この場所が持っている力を、
もう一度、ちゃんと活かしたい。
そんな感覚に近かったと思います。
改修中の酒蔵
ただ、
「じゃあ何をするのか」は、すぐには決まりませんでした。
活用の仕方には、かなり悩みました。
実際につくるものは「酒」。
でも、どんな酒をつくるのかが見えなかった。
日本酒なのか、別のお酒なのか。
地域の素材をどう活かすのか。
何度も立ち止まりながら、考え続けました。
そんな中で、
「やる」と決めたとき、
地域のみなさんが応援してくれました。
特別な言葉があったわけではありません。
でも、「ええやん」「やってみたら?」という空気が、
自然とそこにありました。
ひとりで決断したというより、
地域のみんなに背中を押してもらった、
そんな感覚の方が近いかもしれません。
お祭りの様子
正直に言うと、
今も、絶対の自信があるわけではありません。
うまくいくかどうか、不安になることもあります。
それでも、
この場所で、この人たちと、
お酒づくりを続けていきたいと思っています。
今、私たちは、
地域の素材を使い、小さなロットでリキュールを仕込み、
マルシェや試飲会、ワークショップなどを通して、
人と人が出会う場をつくっています。
お酒は、そのための入口です。
この酒蔵が、もう一度、
人が集い、何かが始まる場所になるように。
そんな思いで、少しずつ、歩いています。